2009年03月

ここでは、2009年03月 に関する情報を紹介しています。
先日のNHKスペシャルでも取り上げられたせいか、最近、認知療法に関する質問をよくいただくようになりました。

認知療法についてお話しする前に、今日は、薬物治療以外のうつ病治療についてお話ししましょう。


薬物治療以外の対応


うつ病というのは、原因がよく分かっていません。過労や介護疲れ、いじめや嫁姑問題など、継続的なストレスが引き金になる場合もありますし、統合失調症など他の病気の症状としてうつ状態になることもあります。また、これといったきっかけがはっきりしない場合もあります。

ただ、うつ病になると、脳内の神経伝達物質(セロトニンとかノルアドレナリンとか)の分泌がアンバランスになることが分かっています。それで元気が無くなったり、集中力が無くなったり、不安が増したり、自己肯定感を失ったりするわけです。

そこで、病院では、抗うつ剤などの薬を使って神経伝達物質の分泌を整えようとします。すると、少し気分が上向きになってきます。もちろん、医師による診断・処方が適切に行なわれ、患者さんも指導通りに薬を飲んだ場合ですが。

生活環境を見直す


しかし、過労がきっかけでうつ病になったような場合、たとえ薬でうつ状態が緩和したとしても、以前と同じようなペースで仕事をしていれば、またいつかうつ病を再発させてしまうかも知れません。

ですから、ただ薬を飲むだけでなく、生活環境を見直す必要もあります。

対人関係スキルを習得する


対人関係でストレスを抱え込みやすい人は、コミュニケーションの取り方に問題がある場合がたくさんあります。

たとえば、

  • 何かを頼まれると断り方が分からないため、よけいな仕事まで抱え込んでしまう。

  • 助けが必要なときにも、援助を求めることができないため、一人で抱え込んでしまう。

  • 自分の気持ちを伝えるときに、けんか腰のような言い方をするので、敬遠されて孤立しがち。


……などです。

そこで、そういう患者さんの場合には、薬物治療である程度精神状態が回復した上で、カウンセリングなどで、コミュニケーション・スキルのトレーニングを積んでいただいたりします。

このブログや、「うつ病の家族への対応マニュアル」の無料ダイジェスト版で紹介しているようなコミュニケーション・スキルは、もともとは患者さんの家族やお友だちのために紹介していますが、患者さん本人も身につけると役に立ちます。

ただし、患者さんに「この冊子を読んで、コミュニケーションの取り方を勉強しなさい」と無理に押しつけないでくださいね。まずはあなたが身につけて、患者さんに実践してみてください。

考え方を変える


同じ現実に直面したとしても、人によって感じ方が違いますね。たとえば、職場で上司に叱られたとします。ある人はやる気を奮い立たせ、別の人は意気消沈してやる気を失います。さらに別の人は死にたくなるかも知れません。

これは人によって考え方、すなわち「起こった出来事に対する解釈の仕方」「現実の受け止め方」が違うからです。

叱られたときに、

  • 「この上司は、私に期待し、私ならその期待に応える力があると信じてくれている。絶対にその期待に応えてみせるぞ」と考える人は、やる気を奮い立たせるでしょう。

  • 「この上司は、私を無能な部下だと思っている。もうこの会社での出世は期待できない」と受け取れば、やる気を失うかも知れません。

  • 「こんな簡単な仕事も満足にできない自分は、社会で生きていくことができない人間だ。まともに働けないような自分のような人間は、生きていく価値がない」などと考える人は、死にたくなるかも知れませんね。


そして、こういう考え方、受け取り方というのは、人によって傾向・癖があって、うつ病になりやすい人は、物事を悲観的に受け止めたり、自分に対してダメ出しをしたりような考え方をする癖を持っています。

そこで、こういう悲観的・自虐的な考え方の癖を見つけ出し、より合理的で、自分や周りの人たちを幸せにするような考え方に修正していく必要があります。そのために用いられるのが、認知療法なのです。


認知療法に関する本もたくさん出ていますが、認知療法を患者さん本人に用いるのは、訓練を受けた専門家が行なう方がいいと思います。考え方の癖を指摘され、それを改めさせられるというのは、患者さんにとっては結構きついので、細心の注意が必要なのです。

私は、患者さんのサポーターさんたち、家族やお友だちなどに、まずは認知療法を学んで欲しいと思っています。患者さんをサポートするのは大変です。その上に、いつの間にか悲観的・自虐的な考え方に陥り、ますます苦しい思いをしておられる人が少なくありません。

認知療法によって考え方を少し変えるだけで、まず自分自身が楽になることが大切です。こちらに余裕がないと、患者さんを支えることは難しいですからね。

認知療法については、次回もお話をさせていただきます。