2009年05月

ここでは、2009年05月 に関する情報を紹介しています。

援助者のための心のケア


うつ病の治療に用いられている「認知療法」ですが、うつ病の患者さんに使うには、やはり専門家の指導の下に行なうのが良いでしょう。前の記事でも言いましたが、うつ病の人にはちょっときついのです。かえって落ち込ませてしまうなどの危険もあります。

私は、ご家族やお友だち……患者さんのサポーターの皆さんにこそ試してもらいたいなと思っているのです。

患者さんに関わっていると、いつの間にかストレスがたまってしまうものです。その結果、イライラしたり、不安になったり、寂しくなったり、落ち込んだりと、いろいろなネガティブな感情に振り回されてしまうことがあります。

これは、カウンセラーや医師などの、プロの援助職も同じです。そこで、援助職の人たちは、自分なりに自分の心を整理し、ケアする方法を持っています。そうでないと、うまく援助ができなくなってしまうので。

そのケアの一つが、認知療法的な方法です。

いつでもできる心のケア


本格的な認知療法をやるのは大変ですが、それを応用したやり方を紹介しましょう。

それは「日記」です。イライラしたり、もやもやしたり、がっかりしたり、傷ついたり、寂しかったり……とにかくいやな気持ちになったとします。その時にはなかなか時間が取れないと思いますが、夜など時間が取れるときに、その時の気持ちを書くのです。

気持ちを書く


この日記は「感情の日記」です。起こった出来事は書かないわけにはいかないでしょうが、大切なのは、その時どんな気持ちだったか、そして書いている今どんな気持ちか。

別に人に見せるものではありませんから、書き殴りでOKです。文法的におかしかったり、矛盾するようなことを書くなど、論理が通ってなくてもかまいませんから、とにかく書く。いっぱい書く。

うまく気持ちを言葉にできなくても、たとえば「胸が締め付けられるようだ」「秋の夕焼けのような気持ち」というような、比喩的な表現でもいいです。もちろん、無理に文学的な表現にしなくていいです。

そうやって自分の気持ちを書くと、書く前よりも気持ちが落ち着いてきます。言葉にすることにより、感情との間に適度な距離が取れるようになるのです。嫌な感情自体は無くならないにしても、感情に「巻き込まれる」状態からは脱することができるようになります。

読み直してみる


感情の日記を書いたら、自分の書いた文章を読み返してみましょう。

もしかしたら、最初のうちは読み返したくないかも知れません。ならば、無理に読み直す必要はありませんが、ある程度書くことが習慣になったら、ぜひ読み返してみてください。

読み返したとき、どんなことを感じたり考えたりしましたか? それも日記の終わりに書き加えましょう。

理由を考えてみる


書いて読み返すことができるようになったら、どうしてそのような気持ちになったのか考えてみましょう。

  • どうして、腹が立ったのでしょうか?

  • どうして、不安でいたたまれなくなったのでしょうか?

  • どうして、悲しくなったのでしょうか?

  • どうして、胸が締め付けられるようになったのでしょうか?


どんな感情であっても(他の人にとっては理解できない反応であっても)、本人にとっては感じて当然の感情なのです。そして、前の記事で書かせていただいたように、感情は考えが生み出します。考えとは意味づけ、理由付けです。

嫌われたと考えれば、悲しくて当然ですよね?

生活していけないと思えば、不安になって当然ですよね?

自分だけが苦労して、誰も助けてくれないと思えば、押しつぶされるような気持ちになるのは当然ですよね?

反省も自己弁護もしない


感情とその理由が見えてきたら、そのまま「そうか。あの時、こんなふうに考えたから、こういう気持ちになったんだなあ」と認めます。

別に、「こういうふうに考えるのはおかしい」なんて反省したり、「そう考えてどうして悪い!」と自己弁護したりしないで、ただ、そうなんだなと認めます。

そして、日記のノートを閉じます。これをしばらく続けてみてください。すると……あ、この先は、やった人なら分かります。何が起こるか、お楽しみに。

もっと認知療法を学びたい方のために


認知療法について、もっと詳しく学びたい方は、いろいろ書籍が出ているので参考になさるといいでしょう。

私がお勧めするのは、以下の2冊です。

  • 大野裕「こころが晴れるノート」(創元社)

  • グリーンバーガー&パデスキー「うつと不安の認知療法練習帳」(創元社)


しつこくてすみませんが、くれぐれも患者さんに認知療法の書籍を読むよう勧めたりしないでください。うつ病の人は、読んだり書いたりすることにストレスを感じます。必ず専門家の指導の下に行なってください。