2011年03月

ここでは、2011年03月 に関する情報を紹介しています。
アメリカの著名なカウンセラーでいらっしゃるリンダ・バグリー先生の、「うつ病」に関する講演を聴きました。


実は、リンダ先生のお母さんは、ずっと長い間うつ病に苦しんでこられました。

リンダ先生ご自身はうつ病ではなく、お母さんを支える立場にいたのです。でも、ご自分の中にも、うつ的な傾向があるということに気づかれました。

以下は、リンダ先生の語られた言葉の一部です。

リンダ先生の言葉


突然の衝動


これは、私がいつものように、いつもの家事をしていたときの話です。そのとき、私は食器洗い機からお皿を出していたのですが、突然、重い鉄製のフライパンをグッと握りしめて、それを居間に向かって投げつけたくなりました。

キッチンのカウンターから居間を通り抜け、窓ガラスを破壊し、裏庭に飛び抜けて、裏庭のフェンスも飛び越えて、その後ろにある墓地に到達するような勢いで、フライパンを投げたくなったのです。

突然そんな思いに駆られた方はいらっしゃるでしょうか? いったい、どこからそんな感情が出てきたんでしょうか。

私は、そんなことをやりたいと思ったこともないし、やっていいとも思いません。それまで、私は良い市民の鏡のような生き方をして育ってきましたから。

私は、八人兄弟の長女として、良い模範になるようにと、ずっと教えられてきたのです。いつも正しいこと、なすべき事をなすようにしてきました。

それまでそんなふうに真面目に生きてきたのに、そして、そのとき、私には二人の子ども、娘と息子がいました。その母親でありながら、まるでその時の気持ちというのは、裏の墓地に眠っている人々のように死んでいる。そんな気持ちがしたのです。

(中略)

うつ病の原因


うつ病にはいろいろな原因があります。脳内物質のアンバランス、長期に渡って味わう否定的な経験、「これを信じなさい」と子どもの頃から教わった「ものの見方」などです。

それから、女性は男性に比べると、二倍から三倍、うつ病にかかりやすいという事実があります。これは、女性が男性よりも弱いからではありません。生物学的に、両性に違いがあるからなのです。

たとえば、エストロゲン、メラトニン、コルチゾール、セロトニンなどのホルモンの分泌量が、男女では異なります。これらの違いが、うつ病へのなりやすさと関係があることが分かってきました。また、女性の方が、男性よりも人間関係に気を遣う傾向にあるようです。これも、女性の方がうつになりやすい原因のひとつだと、私は見ています。

うつ病の二つの特徴


落ち込みの度合いが強くても弱くても、うつ病には二つの特徴があります。ひとつは「飲み込んでしまった怒り」。もう一つは、「とうていコントロールできない状況でも、コントロールできて当然だという思い込み」です。

私も、成長していく中でいろいろなことを教えられ、思いこまされてきたんだなと分かってきました。「考えるな、感じるな」というようなメッセージですね。

あるいは、「良いことが言えないのなら、何も言うな」。私は、他の人に受け入れられる範囲内のことしかしゃべるなと、訓練されてきました。

それから、子どもの頃の台所にこんな文章が掲げられていました。「私は、自分に靴がないのをみじめに思っていました。しかし、ある時、足を失った人と出会い、自分のみじめさを克服しました」。要するに、どんなに深い悩みがあったとしても、もっとつらい人がいるんだから我慢しろ、ということです。

こうして、私は、自分が本当に何を感じ、何を考えているのかということについての実感を失ってしまいました。私はまるで、良いことを語り、ていねいな振る舞いをするロボットのようでした。それらの良い態度は、演技に過ぎませんでした。私は、自分が、最初からそのように設計されたようなものだと感じていました。

飲み込んでしまった怒り


でも、いつもいつも他人に対して「ナイス」でい続けることなんて無理ではありませんか? 実際、人生には痛みを伴うようなことが起こってきます。そして、その痛みというのは、ほとんどの場合、自分にとって大事な人との関係の中で起こってくるのです。

誰かに見捨てられたり、虐待や暴力を受けたりすると、人は本来造られた姿になれなくなってしまうのです。そして、そのような痛みを持ったままで生きていくのは、大変つらいことです。そこで、人は、怒りなど他の感情で痛みを覆ってしまおうとします。傷ついたり、痛みを感じたりするよりは、怒りの方がまだパワーを感じられますから。

しかし、怒りを表に表すと、遅かれ早かれ、私たちは批判を受けることになります。そこで、怒りもまた抑え込んで、見栄えの良い外装で覆ってしまうのです。他の人が自分に「このような生き方をしろ」と押しつけてきた基準に従って生きることは、案外うまくできてしまいます。それが見栄えの良い外装です。

ところが、そんなふうに長い間、自分の本音をカムフラージュしていると、時々フッと、落ち込み、恐れ、怒りなどの感情が出てきても、それが自分のものでないかのように感じてしまいます。そして、どうしてそんな感情が出てきたのかも分かりません。

(ここまで)

あなたの感情


さて、あなたも、うつ病の患者さんを支える立場でいらっしゃいますね?

でも、もしかしたら、患者さんとの関わりの中で、いつの間にかあなたもうつ的になっていらっしゃったかもしれません。そしてそれは、患者さんとの関わりの中で、あなたご自身が感じてきた、怒りなどの否定的な感情を、一生懸命に無視しようとしてきた結果なのかもしれません。

私は、このブログや、拙著「うつ病の家族への対応マニュアル」の中で、患者さんの気持ちに焦点を合わせることが大事だと訴えてきました。でも、実は、もっと大事なのは、あなたご自身の気持ちに焦点を合わせることです。

患者さんの話を、直さないで聴き、共感していらっしゃるように、あなたご自身の心の声を、もっともっと聴いてあげて下さい。それによって、あなたの心が強められます。

そして、そうすれば、患者さんとの関わりにも良い影響を出てくるはずです。