2011年10月

ここでは、2011年10月 に関する情報を紹介しています。
拙著「うつ病の家族への対応マニュアル」を購入してくださったI・Mさん(彼氏さんがうつ病の女性)から、こんな経過報告をいただきました。

彼は、「将来が見えず、死にたい」とずっと言っていました。

実際、自殺未遂をしてしまったために、彼は北海道の実家に帰り、遠距離恋愛になりました。

実家に帰ってもなお願望が強い彼に、電話とメールでのコミュニケーションしかできず、どうしたら生きてくれるだろうと毎日不安で、悩んでいました。

マニュアルを読んで、「そうなんだ」「そうだよね」と相槌を打つことは徹底して実行しました。

「好きだよ」「離れたくないよ」という気持ちも溜め込まず、タイミングをみて伝えました。

それだけでは彼の自殺願望は消えませんでしたが、家族にもお医者さんにも言わないような「死にたい」という話も、私にはずっとしてくれました。

また、私が夏季休暇をとった際に北海道(彼の実家)へ行ったのですが、それが彼にとって良い刺激になったのか、今まで積み重ねた成果が現れて、私が帰るときには泣きながら「もう一度がんばって生きてみる」と言ってくれました。

それからは波はあるものの、自殺願望は見えなくなりました。


「うつ病は心の風邪だ」などというたとえがありますが、これは「誰でもかかる可能性がある」という意味であって、自殺の可能性があるだけに軽く見てはいけない病気です。I・Mさんの彼氏さんの場合、実際に自殺未遂をやってしまったわけで、I・Mさんもとても心配していらっしゃいました。

遠くに住んでいて、電話とメールしかコミュニケーションをとれる手段がない中で、ただただ彼の話を否定しないで耳を傾け、その気持ちを共感し続けるのは、それしかできないとはいえ本当に不安だったろうと思います。それでも、I・Mさんはそれに徹し続けました。

でも、それを続けてこられたからこそ、彼氏さんは生きる勇気を受け取られたのです。「死にたい」という言葉をしっかりと受け止めてもらい、そう言わざるを得ない苦しさを分かってもらったとき、「でも、私はあなたを愛しているから、死んで欲しくない」という言葉を聞く余裕が、ちょっぴり彼の中に生まれたのです。

だから、彼は「もう一度がんばって生きてみる」というものすごい決断の言葉を、泣きながらですが(それだけ生き続けることは、彼には苦しいのですが)出すことができたのです。

I・Mさんは、これまでよく辛抱して、彼の弱音を聴き続けられたなと思います。どんなにか不安で、苦しかったことでしょう。でも、その苦しさを耐えて、聴き続けた分だけ、彼に生きるエネルギー、生きる勇気が注がれたのだと私は思います。

「聴くことしかできない」ではなく、それは患者さんにとって、ものすごい援助なんだということを、このブログの読者の皆さんにも、ぜひ知っていただきたいと思います。