2014年01月

ここでは、2014年01月 に関する情報を紹介しています。
だいぶ前の話になりますが、テレビでバラエティ番組を観ていました。その番組の中に、電話相談のコーナーがあったんですね。いろいろな悩みを持つ視聴者の方と電話をつなぎ、ゲストである芸能人の方々がそれに答えていくというコーナーです。

その日、ある主婦の方が家族の問題について話をしていました。最初のうちは普通に話を聴いていた司会者さんなんですが、途中でスタッフから回されたメモを読んで、突然怒りだしたんです。

「奥さん、あなた2日前にも、NHKラジオの人生相談番組で、これと同じ相談したでしょ!?」

NHKの人生相談では、医師や弁護士など、その道の専門家が相談を受けます。そこでは、専門家が話を聴き、真剣にアドバイスをしたはずなんです。

なのに、3日もたたないうちに同じ話を別のところで相談したってことは、そのアドバイスをちゃんと実行してないということです。それは、1日や2日では解決しないような問題でしたから。

だから、「奥さん、本気で解決する気あるの?」と司会者が怒ったわけです。

気持ちが分かる気がする


しかし、私はこの奥さんの気持ちが分かるような気がしました。NHKでアドバイスをもらって、ちゃんと実行しないうちにこの番組に相談したくなった気持ちが、です。

あなたはいかがですか?


相談している人は教えて欲しいわけではない


私たちは、人から相談をされたり、弱音を吐かれたり、つらそうにしている人を見たりすると、何とかその問題を解決してあげたいと思いますよね?

すると、焦ってその人を治そう(直そう)としてしまいます。

すなわち、いろんなアドバイスをしてみたり、その人の今の生き方、言動を修正しようとしたり……。


しかし、それって、悩みを抱えて相談してきた本人にとっては、あまりうれしくない関わり方、むしろ、かえってつらい関わり方なんです。

人が相談する第一の動機


人が、相談をしたり、弱音を吐いたりするのは、治して欲しいからでも、教えて欲しいからでもありません。

……と言い切ってしまうと、ちょっと問題。

確かに治して欲しいし、アドバイスして欲しいというのは嘘ではありません。ホントの気持ちです。

でも、それは「第一の動機」ではないということ。


第一の動機とは、「気持ちを分かって欲しい」ということです。

その問題のただ中で、自分がどんな気持ちでいるのか。

その悲しさ、苦しさ、恐ろしさ、不安、怒り、イライラ、切なさ……。それを分かって欲しい。

これが第一の動機なんです。そして、第一の動機が満たされないと、人はその次に移ることができないんです。

その次というのは、「治して欲しい、教えて欲しい」です。

なぜ人生相談番組をハシゴしたのか


先ほどの奥さんは、つらい気持ちを分かって欲しくて、NHKの人生相談に電話をしました。

ところが、充分気持ちを分かってもらったと実感する前に、「こんなふうにすれば解決しますよ」とアドバイスされてしまった。

だから、第一の動機が欲求不満になったのです。「分かってもらえなかった」と、よけいに切なくなったのです。

だから、別の番組に電話をかけました。もっとましなアドバイスをして欲しかったからじゃなくて、ただ分かってもらいたくて。

しかし、そこでも十分話を聞いてもらう前にあれこれとアドバイスされ、挙げ句の果てに「解決する気がない」と、叱られてしまった……。どんなに切なかったでしょう。

うつ病患者さんの悩み


実は、うつ病の方からいただく相談の中に、「家庭で弱音を吐けない」という悩みが、結構あります。

下手に弱音を吐いてしまうと、すぐに「がんばって」と励まされたり、「そんなことを言うと、言霊が働いてますますひどくなる」と叱られたり、「こんなふうに考えてみたら?」とアドバイスされてしまうのです。

そして「誰もこのつらい気持ちを分かってくれない」と、ますますみじめで、孤独で、悲しくなってしまう……。

大切なモットー


だから、カウンセラーの国分康孝先生はこうおっしゃいます。

     「治そうとするな、分かろうとせよ」


人は治して欲しいんじゃない。分かって欲しい。

あなた自身はどうですか? あなたが誰かに相談したり、愚痴をこぼしたり、弱音を吐いたりするときのことを考えてみてください。


気持ちに焦点を合わせて聴く


治そうとしないで、分かろうとして聴く。

なるほど。じゃあ、具体的にはどうしたらいいんでしょうね。

まずは、「口をはさまないで聴く」ってことをやってみてください。

うつの患者さんが、自分のつらい気持ちを語ったり、死にたいなんてことを言ったりしたとき、ついつい励ましたくなります。「そんなこと言っちゃダメ」と言いたくなります。

しかし、その一言をグッと飲み込んで、「そう……」とうなずいてみてください。

  「そう……」
  「そっかぁ……」
  「そうなんだ……」
  「ふーん……」
  「へー……」
  「なるほど……」
  「それから?」
  「それで?」

これらの相づちの言葉は、それ自体に深い意味はありません。

でも、「ちゃんと聴いてるよ」「もっと話していいよ」「もっと聞かせて」「バカにしてないよ」「叱らないから安心して話していいよ」……というようなメッセージを話し手に伝えます。

焦点は気持ち


このとき、大切なのは、患者さんの気持ちに焦点を合わせて聴くこと。

  「この人はどんな気持ちなのかな?」

そこを聴き取るということ。


どうアドバイスをしたらいいか、その材料探しのために聴くのではありません。


  「この人はどんな気持ちなんだろう?」

そんな思いで聴くのです。



そして、口には出さないけれど(あ、もちろん出してもいいです)、

  「あなたはそういう気持ちなんだね」
  「そうか、そんなにつらいのかぁ」
  「もっとあなたのつらい気持ちを聴かせて」

というような思いをこめて、うなずき、「ふーん」とか「そうなんだー」とかの相づちを入れましょう。


私もカウンセリングの訓練を受けたとき、二人組になって、黙って聴く練習をしました。最初は、2分間黙って聴くのもつらかったです。あなたもそうかも知れない。


でも、やってみてください。だんだんと、口を挟まないで聴くことに慣れてきます。そして、本当に患者さんの気持ちが伝わってくるようになります。すると、その分だけ、患者さんの心はホッとするのです。


うつ病の患者さんは、つらい気持ちがたくさんたまっています。

だから、数回こんな聴き方をしたからといって、それで気分がすっかり元気になるということはありません。でも、気持ちに焦点を合わせて聴いてもらう。それは患者さんにとっては大きな励ましになります。

あなたもさっそくやってみてください。