お酒をやめてくれない患者さんへの対応

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投薬中の飲酒


うつ病の治療では、抗うつ剤や精神安定剤、睡眠薬などの薬が出されることが多いですが、薬を飲んでいる間は、飲酒は控えるのがベストです。薬が効きすぎて、かえって調子を崩してしまったり、副作用が出やすくなってしまったりしますから。

酔っぱらっているときには少し気分が良くなるかもしれませんし、だからこそ患者さんがお酒を飲みたがることもありますが、多くの場合、あとで飲む前よりももっとひどい状態になります。たとえれば、脚の骨ににひびが入ってつらいのに、鎮痛剤で麻痺させて走り回るようなものですから。

そうして、ますます酒が手放せなくなるという悪循環に陥って、アルコール依存症に……。うつ病からアルコール依存症になってしまう人も、案外と多いのです。

いくら言ってもやめてくれません


ただ、いくら家族や友人たちが止めても、ちっともお酒をやめようとしない患者さんもいます。

気持ちのいいお酒ならまだしも、ろれつが回らなくなり、目つきが変わり、酩酊状態になり、場合によっては大騒ぎをしてしまう。そんな姿を見るのは、家族や友人としては切ない限りです。

それで、一生懸命にお酒をやめるように訴えます。このブログでも、「お願い作戦」という方法を紹介しています。

ところが、お願い作戦は強制的にこちらの思い通りに人を動かす方法ではありませんから、相手が聞き入れてくれない可能性もあります。いくら、お酒をやめてくれるようにていねいにお願いしても、ちっとも飲酒をやめてくれず、それどころかお酒を飲むことに出いろんな問題が引き起こされて困り果ててしまう。いったいどうしたものかと、そんな相談を時々いただきます。

そのようなご質問に対してお答えした文章を紹介します(内容は、一部変えてあります)。

ご主人がうつ病でいらっしゃるのですね。治療期間4年ということですが、ずいぶん長いこと、ご主人も、そしてA子さんも苦しんでこられたのですね。よく頑張ってこられました。

お酒の問題は、依存性があるだけになかなか面倒です。お酒は、家族からの関わりによってやめさせることはできないと思った方がいいでしょう。本人が、「このままでは自分の人生も、家族も、何もかも台無しにしてしまう」と思って、何とかしなければと自覚しなければ、周りがどんなにがんばってやめさせようとしても難しいです。

ではどうやって自覚させるかですが、結局のところ、お酒によってご主人が嫌な思いをするしかないのです。困っていない人は、変わろうとしませんから。

ところが、ご主人のお酒の問題で困っているのは、A子さんですね。ご主人は困っていません。昼間からお酒を飲み、廃人のような姿をさらすご主人を見ることが、耐えられない精神状態なのは、ご主人ではなくA子さんです。であれば、A子さんは、A子さんの課題(悪いという意味ではなく、困っていること)を解決しなければなりません。ご主人にお酒を飲ませないことよりも、そっちの方が優先課題です。

一つA子さんに質問です。一つの可能性として、いくらお願いしても、今後ご主人はお酒をやめないかもしれません。お酒を飲むことは、うつ病の治療にとってもマイナスですから、当然回復も大幅に遅れるかもしれません。その場合、A子さんはどうなさいますか?

それでもこの人と共に生活し続けようと決断するのも道。

耐えられないから、自分の心や生活を守るため、(離婚かどうかは別として)離れて暮らそうと決断するのも道。

どの道を選ぶのも、A子さん次第です。これは、A子さんの課題ですから(しつこいようですが、悪いという意味ではなく、困っているのは誰かという話です)、ご主人ではなくA子さんが決めなければなりません。

たとえご主人がお酒をやめられなくても、それでも共に過ごそうと決断したなら、時に忍耐が切れそうになるA子さんの精神状態を支えるための工夫はした方がいいでしょう。たとえば、ご自身がカウンセリングを受けるなど。

もし、このままご主人が、A子さんやご親族や医者の願いやアドバイスを聞かずにお酒を飲み続け、A子さん自身の心を守るために別居もやむなしと決断なさるなら、以下の方法でご主人に断酒を迫ります。

(1) 今のように、ご主人がお酒を飲む姿を見るのは、A子さんにとって耐えられないということを伝える。どうして耐えられないのか、その理由も添えてください。ここのところは、ご主人に話す前に、事前にご自分でよく整理しておいてください。自分で自分の気持ちが分からなければ、当然相手には伝わりません(紙に書き出すといいでしょう。書いてみると、不明確な部分がよく分かります)。

(2) そして、もしこのまま飲酒が続くようなら、もう一緒に暮らすことはできないと伝える。

(3) だから、うつ病が治るまで、完全に断酒して欲しい、そうしたらうれしいと伝える。

言ってみれば、お願い作戦の形を取ってご主人を脅すわけですが、当然のことながら、ご主人が飲酒を辞めない場合、別居する覚悟がないなら、この方法は使ってはいけません。ご主人はすA子さんの言葉我を薄っぺらいものだと判断して、ますますその言葉を軽視するようになりますし、ご主人はただ嫌な思いにするだけで、かえって抑うつ状態や飲酒の方向へと追いやることになります。実行するつもりのない脅しは、百害あって一利なしです。

もちろん、離れて暮らすというのは、かなりの覚悟が必要です。ご主人が自殺を企図した場合に、なかなか止めることができません(今でも、完全に自殺を防ぐことはできませんが)。A子さん自身の経済的な問題も生じるでしょう。

また、この方法を用いると、ご主人の親族からは「見捨てるのか」など、いろいろ言われるかもしれません。ですから、事前にご主人の親族とは、よく話し合っておいてくださいね。もちろん、A子さんの親族とも。

いろいろ厳しいことを申し上げました。しかし、それだけA子さんが本気を見せることが、ご主人の心に言葉を届ける唯一の道だと私は思います。

アルコール依存だけでなく、他の依存症、たとえば買い物依存、薬物依存、暴力依存、セックス依存、ギャンブル依存などについても、「その無責任な困った行動を周りの人たちが尻ぬぐいしない」という対応をすることが大切です。愛情故に、つい尻ぬぐいしてあげたくなりますが、それは「いつまでも無責任な行動をとり続けていいよ」と許可するようなものです。周りの人たちにとっても、本人にとっても良くありません。

そこで、つらい思いをしている患者さんの気持ちには、受容的・共感的に寄り添いますが(やり方は、無料レポートで紹介しています)、どうしても譲れないことに関しては譲らないという毅然とした対応が求められます。

嫌みは言わないこと


なお、今回ご紹介した方法の目的は、患者さんに罰を与えることではありません。不適切な行動の結果を患者さんに味わってもらい、困ってもらうことが目的です。それによって、患者さんが主体的に問題に取り組むようになることを期待しているわけですね。

ですから、困っている患者さんに対して「だから、お酒をやめろって言ったでしょう?」などと嫌みを言ってはいけません。

嫌みを言われると、人は嫌な思いをします。すると、せっかく不適切な行動の結果を味わって嫌な思いをしている患者さんは、あなたに嫌みを言われたから嫌な思いをしているんだというふうにすり替えてしまいます。

嫌みを言うとその場はすっきりするかもしれませんが、そんなことはしないでくださいね。愚痴は、患者さん以外の人にこぼしましょう。
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